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フロントミッションのジオラマつくってみた 1/72フロスト&地獄の壁グリーグ隊長フィギュア【受賞作品】

先日開催されたスクウェアエニックス主催・第一回フロントミッション模型コンテストで、大変ありがたいことにジオラマ部門優秀賞をいただくことができた。この機会に制作の過程やきっかけをまとめておく。

スクエニさん公式Youtube↓35:20頃から紹介。
https://youtu.be/g8MrhU3aJ4U?si=apGF1DXXbkOEhuhC

いろいろな角度から。

制作途中の写真をXに投稿している人がけっこういて、それぞれの作品がだんだん出来上がっていくのを見るのも楽しかったし、みんなで作ってる感が味わえてとても良い企画だった。

作品はホビージャパン2024年5月号にも掲載。昨年、アーマーモデリング誌に作品掲載されて以来、1年ぶりに雑誌に作品を載せてもらえて記念になった。コンテスト応募作品を一覧で見ることができるのもうれしい。

作品に使ったのは、スクエニのプラモデルシリーズ・ストラクチャーアーツの「限定版:フロスト地獄の壁Ver. 6機セット」。

このシリーズでは、ほかにもフロントミッションに登場するいろんなヴァンツァーが発売されている。原作をプレイしたことある人はもちろん、メカ好きにぜひおすすめ。個人的には、大型機動兵器シリーズでアルゲム/グロスター型のキット化を期待している。

コンテストに関わったスタッフのみなさんはもちろんのこと、手頃な価格でインジェクションキット化してくれた商品企画・開発のみなさんには感謝しかない。これからも買って作り続けるので、がんばってほしい!


ここから先は、どうやって作ったか? 興味のある人向けに制作過程の記録。工程としてはおおまかに以下の5つ。

1)ヴァンツァー本体
2)フィギュア・3DCG
3)ジオラマベース
4)ステータスウィンドウ
5)統合・仕上げ

作業自体は並行しながらやってたけど、それぞれ異なる部分をつくって最後に統合という流れですすめた。以下から、Xに投稿した過去の画像をまとめて、個別の工程について簡単に補足していく。

1)ヴァンツァー本体

フロスト地獄の壁セットは専用の黒いボックス。

赤地に黒文字のパッケージでフロストが6個入っている。

通常のパッケージと異なり、「HELL'S WALL VARIANT」と記載。

ランナーは離型剤がけっこう残ってて、昔のスケールモデルを思い出す。

ザルに入れて中性洗剤に浸しながら洗う。

説明書どおりに組み立てる。接着剤不要なのがうれしい。ただし、たまにピッタリはまらないパーツもある。以下は例で、脚部パーツの前面が浮き上がってスキマができている。

はまらないパーツは、ダボかピンのどちらかを適当に削ってあわせる。

どうせ見えないので、多少雑に削ってしまう。パーツ同士を合わせることさえできれば、接着剤とクリップでガッチリ固めてしまえばOK。

ほかにもボディの前面パーツがうまく合わなかったので、同様に削って接着。

パイルバンカーも同じ処理。

素組み完成! 限定版ならではの赤い整形色で、原作に登場したフロスト地獄の壁バージョンが楽しめる。

原作っぽい射撃ポーズをとらせて、クオータービューの戦闘シーンを再現。これだけでもかっこいい。

赤は整形色をそのままで、エッジ部分だけ明るいレッドで塗装。あとは黒やグレーの部分塗装。識別帯はラインデカール。陰影はドライパステル。

武器のみ1500番の黒サフ。最後にトップコートを吹くとスケール感が変わった感じになる。

モールドの密度があって、墨入れすると立体感が増して見栄えがいい。

2)フィギュア・3DCG

フロストのパイロット、地獄の壁隊長のグリーグを3Dモデリングで造形。ツールはZBrush。最初につくったモデルがうまく出力できず、イチから別のモデルを作り直すことになってしまった。

こちらは初代のモデル。

プリントしようとしたらスライサーソフトが固まってしまった。いろいろ調べてみて、モデリングで使ったブラシが変なゴミポリゴンを大量に生成していたことが判明。ZBrush上だとどうにもならなさそうなので、データをBlenderに取り込んで地道にゴミとりをしてみた。

がんばってみたけど、ゴミの削除とモデリングの修正を同時にやるのに限界を感じて、結局もう一度作り直すことにした。

こちらが二代目のモデル。結果的に作り直した方がカッコよくつくれたのでよかった。

無事にプリント。スケールは1/6、1/20、1/35で出力。実際に使ったのは1/6。

目立つ凹凸をリキッドグリーンスタッフで埋めたり、磨いたりを繰り返し。耳のピアスは銅線と100均で買ったビーズ。

タミヤのプライマーサーフェイサーを吹いて、積層跡や磨き残しをチェック。

再び、凹凸をリキッドグリーンスタッフで埋めたり、磨いたり。

適当なところでベースペイント。シタデルの濃いめのグレーと赤茶色と黒を混色したカラーでくまなく塗る。

肌はドライブラシでグラデーション塗装しつつ、明るいところは面相筆を使う。

ミニチュア塗装の要領で、ゴーグルや小物を塗装。

ヒゲは白く塗りたいので、シタデルで青黒い混色をつくって再びベースペイント。

ヒゲは、青黒→グレー→水色→白みたいなグラデーションでドライブラシ。

完成! 服やゴーグルの反射などの細かいところを塗りつつ、全体を仕上げ。

サイズ感。1円玉2.5個分くらい。


3)ジオラマベース

ジオラマベースは廃材とプラ板、100均で買った木製フォトフレームで作成。スマホケースが入っていた透明なボックスに、補強のためにペットボトルの蓋をボンドで貼り付け。フォトフレームの内側におさまるようサイズ調整して、四方をプラ板で囲う。

ベースの四隅をプラ棒で補強。

コルクボードをちぎって重ねて、高低差を出しつつボンドで貼り付け。

コルクボードの段差部分に木工用ボンドを大量に塗る。

ボンドが固まったら段差部分をやすりで削ってスムーズにしたり、全体に木工用ボンドを薄く塗って、コルクの削りカスを散らして自然な凹凸を目指す。

木工用ボンドを水に解いたものを塗りながら、ジオラマ用の砂利を撒く。

ジオラマに植える草を、100均で買ったハケでつくる。適当なところにボンドを塗って草の根本にする。

爪楊枝をつかって、ボンドをハケの奥まで浸透させる。

小さめのバークチップを配置。

ヴァンツァーを配置してバランスをチェック。

黒サフ。

ハケでつくった草を植栽。1/72スケールなので、短めにトリミング。

茶系のシタデルカラーを使って地面を塗装。ヴァンツアーの影になるところは明度を上げないように、マスキングテープでガイドしておく。

地面の塗装に使ったカラー群。茶系やグレー系で明暗バリエーション6色くらい用意して、混色しながらドライブラシしつつ、ハイライトは面相筆で塗装。

地面や岩石の塗装が終わったら、違う草をイメージして植栽の第二弾。最初の草は人間の膝から腰くらいの高さを想定したけど、第二弾は人間の足元くらい=芝生くらい。

植物を塗装。種類が違う2種類なので、それぞれ色味や塗装方法を変える。

完成!再びヴァンツァーを配置して、全体のバランスをチェックしておく。

4)ステータスウィンドウ

プラ板とエバーグリーンの平たいプラ棒を組み合わせて、ステータスウィンドウをつくる。

原作ドット絵の罫線は凹で表現。

全体を明るいグレーで塗装し、文字のガイドをマスキングテープとプラ棒でつくる。体力ゲージのバーはBODYだけ少し減らした(機体胸部に被弾ダメージ表現をした!んだけど、細かすぎて伝わらないので文字にしておく)。

ドット文字を手書き。数値はフロストのデータを反映。

ガイドを剥がしてはみ出しやバランスを面相筆で微調整。

最後に名前「Grieg」をフリーハンドで書き入れて完成! 文字間はもっとツメてもよかったかもしれない。

5)統合・仕上げ

バラバラにつくってきたパーツを組み上げていく。ジオラマベースにヴァンツァー本体・フィギュア・ステータスウィンドウを配置して、全体バランスを調整していく。

二丁マシンガンをディティールアップ。部品ごとに黒と濃いグレーとシルバーで塗り分け。マズルフラッシュはライターで炙ってつくった伸ばしランナー。プラモ狂四郎とかドラえもんのスネ吉兄さんとか、それくらいの世代ではポピュラーなテクニック。

ドライブラシでのグラデーション後に、エッジハイライトを面相筆で入れる。上面のエッジや3辺の頂点のように特にハイライトを強調したいポイントは、2B鉛筆で金属表現。

ヴァンツァー本体は重機的なイメージで塗装ハゲを表現する。塗装がこすれて落ちていそうなところを中心に、錆止め下地っぽい赤茶色を細かめのスポンジでチッピング。下地塗装のさらに下まで露出した鉄部分を2B鉛筆で表現。

実際の重機や戦闘車両と同じく、本体の下部ほど塗装ハゲの表現を強調。

ゲームの戦闘シーンをイメージしてポーズをチェック。

ウェザリングは最初にシタデルのアグラックスアースシェイドを薄めて、雨垂れのムラを意識して塗装。次にMr.ウェザリングカラーのライトグレイッシュで土埃とその雨垂れやスキマに詰まった埃を表現。足元は泥が付着したようにタミヤのウェザリングマスターをこすりつけ。

機体のウェザリングと同じマテリアルで、ジオラマベースもディティールアップしてなじませる。

マシンガンから排莢された薬莢をつくる。マガジンサイズを参考に1mmプラ棒を適当な長さに切り出して、0.8mmピンバイスで両端を開口。

マスキングテープで保持して黒で全体をペイント。

全体を黒く塗装できたら、開口部分は避けて金色で塗装。

マシンガンの排莢口の下方に薬莢をバラまくように配置。1個は落下中を表現するため、空中に浮かんで見えるようにした。

遠目にみると細かくて伝わらなさそうなので、そこだけフォーカスした動画を撮影した。

背景の植栽の中に草そっくりに加工した0.3mm真鍮線をまぎれこませて、薬莢を支えるしくみになっている。

ほかにもいろいろやって完成! おまけでゲーム本編を再現できるセリフのプレートをつくったりもした。

6)制作のきっかけ

もともとフロントミッションが大好きで、特にSFC版とWS版はめちゃくちゃやりこんでいた。のちにシナリオ追加された「フロントミッション ザ・ファースト」や、ガラケーで展開された派生作品の「フロントミッション2089」はもちろん、最近Switchで発売されたリメイクもやった。

キャラクターだと、中ボス的存在として主人公に立ちはだかる「地獄の壁」という6人編成の部隊(防御力が高くて苦戦する)が気に入っていて、特に隊長のグリーグはインパクトがあった。初戦で倒したと思ったら、ストーリーが進むとリベンジで登場する展開があったり、敵側視点のシナリオだと荒くれながらも部下や味方からの信頼が厚い描写があったり、作中の登場人物のなかでも印象に残るキャラだ。

2020年終わり頃にキットの第一弾が発売されたときは大喜びで買った。そのうち地獄の壁の搭乗機:フロストが発売されるかもしれないぞ!出るまで買い続けるしかない!と思っていたら、2022年初に発売された。シリーズ第二弾としてフロストが出て、しかも同時に限定版のフロスト地獄の壁6体セットが発売された。もちろん速攻で予約した。

地獄の壁のフロストを作っていた時期に、ちょうど会社の飲み会があって、趣味で粘土造形やっている話をしたら「ZBrushおすすめ!」と教えてもらった。実際にZBrush触ってみたら、高機能で安価に3DCGがつくれる時代になっててビックリした。3Dモデリングはだいぶ昔に興味をもっていた時期があって、いろいろ調べたり安価なツール(六角大王とかメタセコイアとか)を試したこともあった。しかし、どうにもうまくつくれなかったり、かといってMAYAとかは高いし、ハードウェアの要求スペックも高くてあきらめてしまった。

ZBrushをがちゃがちゃ触って3Dモデリングで遊んでるうちに、フロントミッションのキャラクターのフィギュアをつくって、ヴァンツァーの模型と並べて飾りたくなった。タミヤのAFVとか、マシーネンクリーガーとか、ヘキサギアとか、メカと人物フィギュアを組み合わせたようなシーンが好きなので、同じようなことをフロントミッションでやりたくなったのだ。

そんなことを考えていたら、2023年の秋頃にAmazonのセールで光造形プリンターが2万円台で売られているのを見つけた。勢いで買って、そこからいろいろ勉強して3Dプリントができるようになった。(普段は3万円超えてるけど、セールのタイミングはけっこう安くなる)

そんな頃、ちょうど今回のコンテスト開催を知った。3Dモデリング、3Dプリンタ、模型、ジオラマ、全部組み合わせて何かつくったらおもしろそうだ。そういえば、ヴァンツァーのキットとフィギュアを並べようとぼんやり考えてたっけ。とか思い出して、ゲーム画面を再現するに至った。

とても楽しい企画だったので、フロントミッショに興味ある人も、模型が好きな人も、ぜひ第2回コンテストが開催されたら参加してみてはどうだろう。

それにしても、つくりたいものが多すぎて時間が全然足りないぞ!

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